2005/02/28 第060回 - 加藤 元海 博士

第60回汽水域懇談会

3月3日(木曜日)夕方より第60回汽水域懇談会を行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。

 

『湖沼における突然の富栄養化』

話題提供:加藤 元海 博士 京都大学生態学研究センター

加藤博士は数理生態学が専門で、富栄養化が湖沼生態系に与える影響を数理モデル を用いて調べられています。今回は、ウィスコンシン大学で行った「湖沼のレジー ムシフト」に関する研究の成果についてお話していただきます。

日時:3月3日(木曜日)午後5時より1時間程度
場所:島根大学汽水域研究センター2階演習室(201)

皆様のご来聴をお待ちしております。

概要:
世界中の水圏生態系が直面する深刻な環境問題の一つは、近年の人間活動の 急激な増加による過剰な栄養塩の供給に起因する富栄養化です。湖沼はその流域か らの過剰な栄養塩(リン)の負荷により、水の澄んだ貧栄養状態から植物プランク トンが大量に発生する富栄養状態へと突然変化をすることがあります。一般的によ く知られている例としては、アオコの大発生があります。この水質変化は突発的か つ不連続的に起こり、変化後の水質の改善は困難であることが多く、ときにはリン 負荷量を抑制しても回復不可能な場合もありうるため、湖沼生態系を管理するにあ たって「不連続的な富栄養化」の可能性に関する詳細な評価が必要とされていま す。実際の湖沼において、過剰な栄養塩が供給されているにもかかわらず、富栄養 化が緩衝される場合があります。湖沼生態系の場合、その条件は、湖沼の規模や沿 岸帯植物群落の多寡に依存することが明らかになりつつあります。沿岸帯植物群落 は、根を張ることにより湖底を安定化させ栄養塩の再循環を抑制する効果をもって います。したがって、湖沼の富栄養化で沖帯の水質の鍵を握っているのが植物の生 える沿岸帯であり、沖帯−沿岸帯相互作用が重要となります。しかし、この相互作 用の強さは湖沼形態(大きさ、深さ)によって異なります。今回は、実際に野外観 測や実験で得られたデータを組み込んだ数理モデルを用いて、富栄養化しやすい湖 沼の特徴を明らかにした研究を紹介します。モデル解析の結果、中程度の平均水深 を持つ湖沼において不連続的富栄養化の可能性がもっとも高いことが明らかになり ました。中規模の湖沼は比較的利用価値が高くしかも我々の身近に存在する湖であ り、そのような湖沼に対してこの研究結果はさらに注意深い管理の必要性を示唆し ています。