2011/02/09 第097回 - 高田 裕行 博士

第97回汽水域懇談会

2011年2月18日(金曜日)夕方より第97回汽水域懇談会を行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。

中海本庄水域の堤防開削に伴う底生有孔虫・貝形虫生物相の変化
高田 裕行 博士(島根大学汽水域研究センター研究員)

日時:2011年2月18日(金曜日)17:00〜18:00
場所:島根大学汽水域研究センター2階セミナー室(201)


発表の概要:
中海本庄水域では2009年5月に森山堤防の開削(幅60 m)が行われ,本庄水域と境水道との間で水交換が行われるようになった.こうした人為的環境改変の影響に伴う底生有孔虫群の変化について,森山堤防開削地点近傍のM9地点で我々の研究グループが検討中の結果を,報告する.
本地点の底生有孔虫生体(染色)個体は, Ammonia "beccarii" forma 1,Trochammina hadaiが主要な構成種である.A. "beccarii" forma 1の殻サイズ組成は明瞭な季節変動を示し,概して冬〜春季に小型個体が多いのに対して,夏〜秋季には幅広い分布を取る.また,その現存量は,2008年には,夏〜秋季にかけて単調に減少したのに対して,開削が行われた2009年は夏季も現存量はほぼ一定だったが,冬季に減少している.かわって,T. hadaiが多産しつつある.
以上のことから, 2007年冬季以降のA. "beccarii" forma 1の増加は,本庄水域への底生有孔虫の移入がかつては散点的であった上に,その個体群が短期間に消滅していたのに対して,西部承水路撤去工事以降は,中海から本庄水域への個体の移入が頻繁に起こり,定着しやすくなったことによると思われる.しかし,森山堤防の開削後の冬季に起きた本種の急減は,個体の移入がM9地点にまで及びにくくなったことを示唆する.以上のように,本庄水域に生息する底生有孔虫群にとって,冬季における中海からの移入は,重要な意味を持つと考えられる.