2011/10/19 第101回 - 入月 俊明 博士

第101回汽水域懇談会

2011年10月28日(金曜日)夕方より第101回汽水域懇談会を行います。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。

瀬戸内海の最近の水質・底質環境と小型底生動物(甲殻類,貝形虫)
入月 俊明 博士(島根大学総合理工学部・島根大学汽水域研究センター兼任教員)

日時:2011年10月28日(金曜日)17:00〜18:00
場所:島根大学汽水域研究センター2階セミナー室(201)


発表の概要:
この研究の目的は,瀬戸内海において,最近の水質汚濁のような人為的環境改変がいつ始まり,小型底生動物(節足動物甲殻類の貝形虫)にどのような影響を与えてきたのかを検討し,今後の環境改善方策の一助とするということである.しかしながら,人為的環境改変は多岐にわたっており,どの種にどのような要因が最も影響を与えたのかを議論するための水質・底質データ(有機物・重金属濃度など)が限られている.そこで,このようなデータが比較的そろっている周防灘中央部を例に貝形虫の時系列変化とその要因に関して検討した.
試料は2009年2月に環境省の委託研究で(社)瀬戸内海環境保全協会により,水深38.1mの周防灘中央部から採取された71cmのコア(Su-93コア)である.年代は 210Pb法により決められ,最下部が約1890年に相当する.貝形虫の個体数は1930年代にピークに達し,多様性も高い.その後,1970年代の終わりから1980年代にかけて個体数や多様性が激減する.貝形虫種群は大きく2つ(種群KAとBC)に区分された.種群KAはすべて1970年代に急減し,現在はまれ,あるいは全く産出せず,泥底の内生種を含む.一方,種群BCは増減の変動を繰り返し,現在でも認められ,底質表層のフロキュレント層中に生息し,有機汚濁への耐性が強い種が多い.コア中の全有機炭素・全窒素濃度は1970年代から急激に増加し,これは,調査地点付近で報告されている底質のCODの変化と調和的で,この時代に急激に底質の有機汚濁が進行したと推定される.また,主に浮遊性珪藻種からなる珪藻群集の密度も1970年代に急増し,コア中の全有機炭素・全窒素濃度と調和的な変動を示す.
このように,1970年代における種群KAの激減は,水質汚濁とそれに伴う底質の有機物量の増加と密接に関連しており,これらの種は汚濁の少ない環境を示す指標として有用で,現在復活しないのは底質の状況が1970年代以降改善されていないことにある.一方,種群BCの最多産種は,沈降する水中の有機物量(エサ)の増減に影響を受けた可能性がある.

掲示用ポスター