2003/07/11 第050回 - 茅根 創 博士、渡邉 敦 氏

第50回汽水域懇談会

7月11日(金曜日)夕方より第50回汽水域懇談会を行います。今回は二人の方に 話題提供を行っていただきます。皆様お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお 願い申し上げます。

 

1.『サンゴは警告する』

茅根 創教授 東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学専攻・地球 惑星システム科学大講座

2. 『サンゴ礁・汽水域における海水のCO2系形成プロセス』

渡邉 敦氏 東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学専攻・博士課程3年

 

日時:7月11日(金曜日)午後4時より6時まで
場所:島根大学汽水域研究センター2階演習室(201)

地球温暖化に対する生命圏の応答や沿岸海域の生物群集代謝とCO2の関係などにつ いて興味深いお話が聞けるものと思います。
皆様のご来聴をお待ちしております。

なお、今回の懇談会に関して何かお問い合わせ等ございましたら、世話人の堀之内が7/1午後から7/20まで出張で不在のため、汽水域研究センター長の高安克己教授(takayasu@soc.shimane-u.ac.jp)までお願いします。


1.『サンゴは警告する』

茅根 創教授 東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学専攻・地球 惑星システム科学大講座

地球表層システム科学の目的は,大気−海洋−地殻−生命圏と人間との相互作用と その変動を明らかにすることである.私の研究室では,サンゴ礁を主な対象とし て,地球表層システムの相互作用としての炭素循環,地球規模変動に対する生命圏 の応答,古環境変動などについて研究を進めている.

地球規模変動に対する生命圏の応答について,生命圏はすでに温暖化(20世紀を通 じて0.6度程度)に応答しているのだろうか.いくつかの生物群集については,20 世紀の前半に比べて後半の方が分布域が北に移動していることが報告されている. 1997-1198年にかけて起こった「サンゴ礁の白化」は,温暖化に生命圏が地球規模 で応答したはじめての例であると考えている.白化とは,様々なストレスによって サンゴの体内から共生藻が抜け出す現象で,この時の白化は地球規模で起こった高 水温異常によって起こった.白化によって生物代謝は劣化して,CO2固定から放出 にシフトしたことがわかった.またこの時には北限のサンゴ礁も白化したが,温暖 化の影響が単純に生息域の北へのシフトとは言えないことを示している.白化から の回復は,群集の多様性の高いものほど有利であった.白化後サンゴが再獲得した 共生藻は,高水温に対してより耐性の 高い遺伝型をもつものであったことから, 白化はサンゴの適応過程であると考えられる.

1997-1998年の白化は,地球温暖化に対する生命圏の応答について,事実に基づい た情報を提供してくれる.こうした早期の徴候を見逃さず詳細に調査・解析するこ とが求められる.


2. 『サンゴ礁・汽水域における海水のCO2系形成プロセス』

渡邉 敦氏 東京大学大学院理学系研究科・地球惑星科学専攻・博士課程3年

地球温暖化との関係から、沿岸海域がCO2の吸収源なのか放出源なのかについて多 くの研究がなされてきた。しかし、これらの研究の多くは、海水中のCO2分圧を計 測しそれを大気のCO2分圧と比較してフラックスを求めるというものがほとんどで ある。真の意味で沿岸海域の特性を知るためには、海水中のCO2分圧が淡水などの 異なる水塊との混合による物理過程と、群集代謝(光合成・呼吸、石灰化)による 生物過程のどちらによって、どのように規定されているかを定量的に示す必要があ る。私はこうした点に着目し、私は沿岸海域の平均的な生物群集代謝とCO2の関係 について、研究を進めてきた。

本研究では、生物群集代謝を求めるのに最適なアルカリ度・全炭酸の迅速かつ高精 度な分析を行い、合わせてCO2分圧を計測することで、CO2分圧とそれを規定する生 物過程を定量化する。

調査対象は生物生産性が高いと考えられる次の3つの沿岸海域である。一つは熱帯 域サンゴ礁(パラオ)で、ここでは90年代にサンゴ礁環境が著しく劣化し、生サン ゴ被度が6分の1に低下した。生物群集の劣化に対応して、光合成・石灰化量も大き く低下し、CO2変動幅も大きく減少した。次に亜熱帯のマングローブ・海草藻場・ サンゴ礁が連続的に見られる海域では、生物代謝が冬季に夏季の60%に抑えられて いること、河川流量が大きな冬季のほうがCO2分圧が低くなっており、生物的にCO2 が固定されていることが分かった。半閉鎖的な汽水湖(中海)では、表層と底層に CO2の明瞭な成層がみられた。底層では有機物分解と、その後の嫌気的反応(脱窒 素・硫酸還元)によりCO2が高くなっていると考えられる。一方、表層では、底層 からの拡散と河川水などでもたらされた栄養塩をもちいて活発な光合成が起こり、 CO2吸収域になっていることがわかった。季節に関係なく、河川流量が大きい時期 に底層および表層での生物代謝が活性化している可能性も示唆された。